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(プロフィール)

渡辺保宣(わたなべやすのぶ)

2015年に埼玉から南魚沼へ Iターン移住

奈良県出身。田舎で土を弄っている生活をしたいと、山梨、長野、新潟、福島などの物件を探すうちに、南魚沼市内の築70年ほどの民家に出会い、移住。青森県出身の奥さんは現在、仕事で東京に行くことも多いそうですが、渡辺さんはほぼ南魚沼に居住しています。

「東京の生活よりも、田舎で土を弄っている生活をしたい」という思いから関東近郊での移住先を探していた渡辺さん。その最中に出会ったのが、南魚沼の小さな集落にあった古い民家です。その土地に惹かれてすぐに移住を決め、地元で古民家の改築も手がける工務店に頼み、リノベーションを行いました。古い梁や柱、囲炉裏をいかし、薪ストーブや最新のシステムキッチン、桧の風呂を入れた快適な家になりました。春から秋は家を取り囲むような畑で野菜づくりに取り組む渡辺さんに南魚沼での生活を聞きました。


結婚とか家とかというものは衝動買いでないといけません(笑)

南魚沼に移住をしたきっかけは、この土地に出会ったからですね。もう出会い頭の衝動買いですよ(笑)。結婚とか家とかというものは、いろいろ考えずに衝動買いしないと(笑)。

もともと、東京で生活するよりも、田舎に行って、土をいじっている生活をしたいなと思って探していたんです。僕は奈良出身ですけど、関西に帰ろうとは思っていなかったんで、山梨とか長野とか知り合いのいる福島とか。新潟もかなり探しました。

いまはネットで「田舎暮らし」とか検索すると山ほど出てきますけど、南魚沼に支店がある不動産屋さんの物件の中に、この家を見つけました。金額は手頃で、古民家風で周りに畑があって。

敷地は500坪弱くらいあるかな。外国にいって「お前の土地の広さはどのくらいだ」と言われたとき、100坪くらいじゃ何もいえないけど、500坪くらいあるとだいたいハーフエイカーになるから「ハーフエイカー」と答えると「そうか」と納得される。そんな感じの広さです(笑)

妻が反対したかどうかですか? 都会にいるよりは田舎にいたいとは思っていたかもしれないけど、実際に来るかというのは別問題だったと思いますよ。でも反対せずに来てくれました。彼女の言い分としては「私が反対して行かなかったりして、その後の一生、“お前が行くなっていったから俺がやりたいことをできなかった”と言われるのは嫌」ということみたいですが(笑)。


キャプション間取りの変更など、地元の工務店に頼んで改築しました

買った時は床が抜けていたり、ひどい状態でした。それで、地元で古民家を主に手がけている工務店に頼んで改築したんです。かなり手を入れましたよ。夫婦2人なんでそんなに部屋はいらないから、一部はとっぱらったり、廊下は狭かったから幅を広げてもらったり、2階への階段はあまりに急で縄がぶら下がっているような階段だったんで、掛け替えたりもしました。

それから、昔の民家というのは今のマンションと違って、収納場所がほとんどないんです。押し入れというのが母屋に無かったんですね。前に住んでいた3LDKのマンションには3畳弱くらいの納戸があったから、そこに詰め込まれていた物を入れる場所がまったくないから、とりあえず2ヶ所の押し入れを作ってもらったけど、それでも足りなかったかな。

もともと古民家といってもそんなに古い建物じゃなくて、せいぜい築70年くらいだったんじゃないかと思いますよ。

壁は左官屋さんに塗ってもらった壁ですが、中に魚沼産コシヒカリの藁を混ぜてあるんですよ。

周辺の家におじゃまするとコタツの家が多いですが、マンションの時が椅子だったから、そのまま基本的に椅子の生活をしています。膝折るのは苦手し。それにコタツに入ってしまうと動かなくなるし(笑)

台所は最新のシステムキッチンが入っています。お風呂も丸ごと取り替えて桧の浴槽で。やっぱり水回りは古民家のままだと過ごしにくいと思います。そういうものは全部新しいものにしないとしんどいんじゃないかな。

改築に入ってからもまだ東京で仕事があったから、平面図を作ってそのとおりに作ってくれと言ったきり、途中で見に来れたのは2〜3回。設計図も何もなかったからほとんどお任せになってしまいました。

一応、見積もりはもらったけど、私が考えた金額よりとても高くて(笑)。家は比較的安く手に入れましたけど、結局改築にびっくりするほどのお金がかかりましたね。古民家を改築しようとすると、同じ坪数で建てるんだったら新築よりお金はかかります。でも、これで良かったかなと思っているんですよ。


暖房は薪ストーブですが、それだけでもあったかいです

窓は全部、二重ガラスのサッシに変えたり、雪国仕様になっているので、すきま風は無いし、寒いということはないです。

暖房は薪ストーブです。ほかの部屋にはエアコンもありますが、ほとんど使っていませんし。電気ストーブも使ってますけど、2階にある寝室(薪ストーブのあるリビングの吹き抜けに面した部屋)も、あったかい空気がいくように壁の一部を開けて作っているので、暖房なしであったかいですよ。隣の部屋には囲炉裏もあって、それも使っています。買った時は薪ストーブのあった場所にも囲炉裏があったんだけど、料理をするくらいに囲炉裏を使っちゃうと煤だらけになっちゃうからストーブに変えました(笑)。

薪は買っています。実は改築したときに廃材は残してもらったんですけども、釘が多くて、ストーブに入れるように揃えるのがなかなか大変でした。良し悪しですね。

暖房に灯油かガスか電気か薪か、どれが良いかと考えた時、だいたいこの辺で使っているのは灯油ですが、近所の人に聞くと、400リッターの灯油を、1冬で2回くらい使うみたいです。金額としては灯油でも薪でも同じくらいなんじゃないかなと思って、もともと灯油の臭いが苦手なこともあって薪ストーブにしました。キッチンとか風呂はプロパンガスです。

今年は敷地の杉の木を2本切って、薪にしようと思っているんです。杉の木の葉っぱがどんどん近所の田んぼや畑に落ちていて、迷惑かけているので切ろうかと思っていたら「杉は乾くのが早いから、春に切って薪として雨がかからないようにしておけば、冬にはストーブに使えるよ」って言われたんです。だから誰かに薪割機を借りようと思っているんですよ。


浦佐にスキーに来ていたので、雪の多さは覚悟していました

買う前の下見は、もちろん雪の時も来ましたよ。ちょうどその年が雪が多かったんですが、誰も住んでいない家だから雪かきをぜんぜんしてないじゃないですか。除雪されている道路から家まで2メートルくらいの雪の山を乗り越えて、どうなってるのかなって見に来たくらいでした。道路からアプローチが長いから、20メートルくらい雪の積もった中を歩いたかな(笑)。

でも私は浦佐に大学の同期がいて、浦佐のスキー場には昭和40年代から来ていましたから、半端じゃない雪が降る地域だというのは知っていたのは知っていたんです。五六豪雪(昭和56年に、北陸から東北・北海道の広い範囲で起こった豪雪災害)の時の浦佐も知っているんです。その辺を小学生が電線をまたいで歩いていた時に、スキーに来ていたんで。その時は、「こんなになるものなんだ!」と思いましたから。でも、こっちに住んでからは幸い、あんまり雪の多かった年はないんです。今年の1月は4日連続でけっこうな雪が降って、あの時は除雪機の油を買いに行くのも嫌だなと思いましたけど。

でも、雪がふるから面白いところもありますから。


春から秋は野菜作り。今年は道の駅とかの直売所にも持っていきたいですね

家の周りはみんな畑で、敷地の真ん中に家があるって感じです。不動産の宣伝文句でも「耕作中の畑がありますよ」とあって、それが気に入って買ったんですよ。だから春から秋はいろいろな野菜を育ててます。今は畑だけで田んぼやってないですが、「もしやりたいんだったらあるよ」とは近所の人から言われています。でも田んぼは大変そうだから。田んぼを持っていても自分で耕作しないで専業農家に頼んで作ってもらってる人も多いくらいですからね。

春は山菜とりにも行きますよ。家から歩いていけますから!

去年は、自分で育てた大根を干して沢庵を作ったんですよ。糠と塩だけで。売っている漬物はあんまり好きじゃないから。

そういえば、ずっと、ゼンマイを干すためのむしろを探していたんです。ゴザは売っていてもむしろはあんまり売っていないですからね。ゴザよりも、むしろの方が毛羽立っているからか、その方が乾燥にもいいんじゃないかと思っていたんですよね。ところが地元で作っている人がいると聞いたら在庫が無いと言われたりして。そうしたら先日、ホームセンターに地元の人が作ったものがあったんでようやく買えたんですよ。今年はこれでゼンマイを干すつもりです。

春から秋はそうやって野菜を作ったりしています。冬は暇そうに見えますが、自然落下の雪をどかすのが大変な毎日です。そうしないと車を出せないですから。

去年までは、平日に以前勤めていた会社の仕事をときどき手伝ってましたけど、今年はやってないので、春からは作った野菜を道の駅とかの直売所に出荷しようかなと思っています。


移住は若いうちにするのがおすすめと、よく話をしています

先日、4日連続で雪が降った時は「えらいところに来たな」と思わないわけじゃなかったけど、それでも昔からみんなここに住んでいた訳じゃないですか。それこそ塩沢の鈴木牧之さん(江戸時代のベストセラーとなった「北越雪譜」の作者。豪雪を知らない江戸の人々に、地元・塩沢をはじめとした雪国の暮らしを紹介した)の時代なんて、軽い氷河期みたいなもので、いまより格段に寒くて、半年以上、雪の中に暮らしていたと思いますが。いまはせいぜい雪が降るのも4ヶ月くらいですから、当時とはぜんぜん違います。

市内の道路には消雪パイプが通っていて、雪が降ってる時はともかく、降りやむとすぐに道の雪はとけるし。暮らしやすいですよね。

ただ、所要があって2ヶ月に1回くらいは東京に行きます。そのくらいは東京に行く機会を作っておこうかと思って。妻も東京に用事を残しているのでちょこちょこ行ってるから、ワンルームの仕事場を持っているんです。そこで寝ることもできるから、宿の心配はないですね。もしできるなら、両方に拠点があるのはいいと思うんですよ。

ただ、移住を考えている人にはいつも話していることがひとつあります。

「来るんだったら若いうち、50代で来なさい。40代だったらもっといい」と。

我々団塊の世代がもう70歳前後ですけど、そんな歳になってからじゃなくて、若いうちの方が体力もあるし、その土地にも溶け込めるし。

私は奈良県出身で妻は青森県出身なので、二人とも知り合いとかはない中で移住しました。はっきりいって近所の人からは良くしてもらってますよ。知らないところに新しく入ると、馴染めないということもあると思うんですが、そんなこともなく、結果的にいいところに来たなと思います。

だから、移住から3年たって、後悔していることはあまり無いですね。本当に楽しく過ごしています。